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〒035-0096 青森県むつ市大字大湊字大川守44-5 [地図]
意外と滑り応えのあるローカルスキー場だが…
☆☆★ 2.5 今度はボードを持って、また来ることがあるかどうか…
【総評…というか訪問記】
クルマに不具合が見つかって長期入院してしまった。折角スタッドレスも買い換えて、今シーズンは準備万端と思っていたのにツイてない。とは言え、季節も雪も待ってはくれない。こうなれば飛行機か新幹線で、普段は行けない遠方のスキー場を新規開拓するいい機会じゃないかと開き直ってプランニングだ。
僕は、北は北海道の名寄ピヤシリから西は岐阜のほおのき平まで、約120か所のスキー場を巡ってきたが、青森のスキー場というのは、まるでエアポケットのように一つも行ったことがない。んじゃ、今回は青森遠征だな。
この釜臥山は、当初、リストからは外していた。チェアリフトのあるまともなスキー場としては本州最北端、陸奥湾を間近に望む絶景、滑り応えのある上級コース…行ってみたい動機はあるのだが、アクセスに難があり過ぎたからだ。ところが、新宿駅で何気なくJRの旅行商品のパンフを眺めていたら、大湊駅にJR直営のホテルがあり、その宿泊と東京からの新幹線、大湊線の運賃込みのパッケージプランがあることが分かったのだ。こいつを使えば、釜臥山は行程に組み入れることができる。此処の代わりに候補に挙げていたのは、モヤヒルズか八甲田。だが、モヤヒルズは、この計画を立てている時点で、雪不足のため上級コースがクローズしたままだったし、八甲田は、天気が良くないとぜんっぜん面白くないハズ、天候の安定しない2月上旬にピンポイントで狙うのはリスクが大きすぎる…ということで、迷うことなく釜臥山と入れ替えたのだった。
2月7日。朝一番のはやぶさで八戸まですっ飛び、一両ぽっきりのディーゼルカーのくせに、これまたやたら飛ばしまくる大湊線の快速しもきたで、昼前には大湊に着いた。駅近くのラーメン屋で昼メシを済ませ、ホテルで着替えてスキー場へ向かう…のだが、この、大湊駅からスキー場までのアクセスも悩みの種だった。タクシーを使うとちょっと高くつく。経費で落ちる仕事ならともかく、個人の遊びの範疇ではそうそう気安く使えない。路線バスなら、最寄りの海上自衛隊前バス停から15分くらいの歩きだ。しかも行きはずっと登り坂である。軽装なら気にもならないが、板やブーツを担いで歩くのは勘弁してもらいたい。因みに僕は、スキーもボードも両方やるのだが、今回は、後日訪問する別のスキー場で「コブがある」という情報を得ていたので、スキー持参である。ボード一式よりスキー一式の方が遥かに重い。結局、スキー板を担いで延々坂を登るのはイヤだから、板とストックは事前に宅配便でスキー場へ送っておき、ブーツだけリュックに入れて、バスで行くことにした。このバスは朝から晩まで、毎時一本くらいのペースで走っていて、使い勝手は非常に良い。バスを降りると、国道脇にはスキー場入口の看板が立っていて、迷うことなく登り坂にさしかかる。左手に、大湊が海軍の一大根拠地だったことを物語る大規模な水源地の遺構を、右手にはおそらく自衛隊の官舎と思われる集合住宅を眺めながらトコトコ登ること10分少々、割とあっさりスキー場の駐車場が見えてきた。何だ、心配したほどタイヘンな道のりじゃなかったよ。帰りは板を担いでの歩きになるが、ずっと下り坂だし、問題はなかろう。スキー場の券売所を兼ねた管理事務所で送っておいた板を受け取り、レストハウスの隅で荷をほどき、ブーツを履き替える。カラになったバッグや靴は、荷物棚に放り込むだけだ。コインロッカーなどという大袈裟な金食い虫は、こんな田舎のスキー場には無用だ…イヤ、どっかにあったのかも知れないが、初めから使うつもりなど毛頭なかったから、気付かなかっただけだろうか。別に貴重品を預けるわけでもなし、誰も何も盗りゃしないさ、というのんびりムードが、こういうローカルスキー場のいいところだ。こうして、準備万端、スキー場のベースに立ったのは14時頃だった。
このスキー場、リフトは縦に2本。滑走標高差は約370mで、これは立派な数値だ。気になるのは標高の低さ。海に近いこともあり、トップの標高は480mくらいしかない。果たして雪質はどうか?本州最北端という緯度の恩恵はあるのだろうか?上級コースは上部のみで、16時には終了してしまう。それだけ滑るなら2時間券でもいいが、此処はナイター時の夜景も売りのひとつだ。いちお、それも考慮して4時間券を買った。もちろん、リフト券は安い。
下のリフトは固定式のペアで、乗り場には何とローディングカーペットが設置してある。ローディングカーペットは、高速運転している固定式リフトで、乗車時の衝撃を緩和するために設置するケースが多いのだが、此処もそうなのだろうか?体感的には特に高速運転してるようには思えず、利用客に子供が多いから、安全を考慮して設置したのかも知れない。上のリフトは無骨なシングルだが、支柱は割と新しく見えた。そして、眼下に広がる非圧雪の急斜面。むろん、こんな時間の滑り出しだから、新雪は喰われまくりだが、そもそも滑走者の数が少ないので、コース端は意外と綺麗なままだ。コース中央にはラインコブが2本。雪が少ないとは聞いていたが、コブの溝からブッシュが出ている箇所が少しあるだけで、後は概ね十分な積雪量だ。リフトを下りて背後を見ると、なるほど聞きしに勝る光景がバーーーン!!と広がっていた。手前には、砂州に抱かれるように大湊港があり、自衛隊のモノモノしい艦が2隻、係留されている。その先はひたすら広大な陸奥湾が広がる。左手にはむつ市街があり、下北半島の緩やかな海岸線がずっと先まで続いている。そして、さらに左には、半島を挟んで反対側の太平洋まで見えるではないか。情報収集の段階で、何度も写真で見た光景だが、自分の目で見るとやはり感慨深い。思えば遠くへ来たものだ。数多くのスキー場を訪れて、海を見ながら滑ったことは何度かあるが、これほどまで海に近いスキー場は初めてだろう。
だが、文句なしの高評価は残念ながらここまでだった。
雪質が、悪い。想像以上に悪い。
この日、日中の気温はベース付近で0℃くらい。日差しはあったので体感的にはもう少し暖かかったが、決してヘンな暖気が入っていたわけではない。気象庁の統計データを見ても、ごく標準的な気温である。トップはもう少し下がって、おそらく氷点下を維持してたとは思うのだが…湿雪なのである。握ると完全なダンゴになる、雪合戦用の雪質なのだ…
“緯度の恩恵”というものに期待しすぎたようである。以前、北海道の、似たような標高の低地スキー場で、ウハウハのモモ上パウダーに遭遇した時「やはり北に来れば標高はカンケーねぇ!!」と確信したのだが…その経験則は、津軽海峡を跨いで脆くも崩れ去ってしまった。せっかく、青森まで、それも下北半島まで足を延ばしても、低標高、海に近い、南斜面という悪条件は、緯度の恩恵を完全に打ち消していたのである。
スキー場選びに於いて、雪質を最優先項目とし、福島以南では、トップの標高が1,000mに満たない低地スキー場には寄り付かないようにしている僕にとって、この湿雪は決定的なマイナスポイントになってしまった。
一方で、斜面の資質は決して悪くない。MAX35°の上級コースは充分にチャレンジ意欲を掻き立てるものだ。また、多少荒れて、間延びしてはいたが、コブを滑れたのも予想外の高評価。上部のリフトが動いている2時間は、あっという間に過ぎていった。だが、くどいようだが雪質の悪さは如何ともし難い。湿雪の不整地がどれほど体力を消耗させるものか…こんな駄文をわざわざ読んで下さる先輩諸氏には言わずもがなだろう。
上部のリフトが終了した16時、もはや僕の中には、これ以上滑り続ける気力も理由も無かった。これ以降、ナイターまで営業するのは下の初級コースのみ。ボードを履いていれば、緩斜面でもフェイキーやちょっとしたグラトリの練習などやることはあるのだが、スキーの時は正直やることがない(笑)。選択肢は二つだ。ボードをレンタルして日没まで滑り、夜景を見るか、もう帰るか。湿った雪と格闘してパンパンになった我が太腿に問うてみると、即座に「もう帰ろう」という答えが返ってきたのだった。
…少々辛口の評価になってしまったが、あくまで個人の主観によるもの、許してもらいたい。裏を返せば、それだけ僕の中で雪質というのは重要だ、ということだ。それに、もしボードで滑っていたら、もっと高評価になっていたかも知れない。湿雪の不整地では、スキーよりボードの方が遥かに楽しく滑れることを僕は経験上知っている。ひょっとすると、何年か経った後、今度はボードを持って、少しでも雪の良さそうな1月にまた来たよ~なんてコトがあるかも知れない。やっぱ、あの景色と急斜面はなかなか捨て難いからね。
【天候・気温】
晴のち雪 昼過ぎ、ベースで0℃くらい
【公表積雪深・雪質】
60cm 湿雪
【リフト、コースオープン状況】
全リフト運行、全コースオープン
【混雑状況】
平日。地元小学校のスキー授業あり。自衛隊あり。リフト待ちなし。コース混雑なし。