雷電風雪さんの滑走記録
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雷電風雪さんの ニヤマ高原 滑走記録

2013年02月13日〜2013年02月13日 (1日間)

ゲレンデニヤマ高原

ニヤマ高原 本来は個人の記録用に書いたモノですが参考にどうぞ。

ロコスキー場であまり情報が無いようなのでカットせずにそのまま載せます。長文ですがお許し下さい。

列車の時刻やリフト券等の料金はすべて当時のものです。

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2013年2月、厳冬の北海道を堪能すべく2週間に及ぶ旅に出た。北海道滞在中、5か所のスキー場を訪れたが、記念すべきその初日、一発目に選んだのがここニヤマ高原スキー場である。

2月13日水曜、朝一の便で羽田から函館空港へ飛び、予約してあった函館駅前のホテルに荷物を預け、午前中は市電に乗って青柳町まで出かけた。市立博物館にある、函館戦争関連の史料を見たかったからだ。そして、午後からがスキータイムだ。

このスキー場は仁山駅から歩いて10分もかからないので、僕のように公共の足で動く旅行者にも行きやすい。規模的に半日もあれば十分滑れると判断し、2,500円の4時間券があるので、これを使うことにした。

ところが列車の時間を調べる段階でちょっとした問題があった。仁山駅の辺りは函館本線が二股に分かれて走っており、僕が乗ろうと思った函館13:20発の列車は仁山駅を通らないのだ。その前の列車では早すぎて博物館に行く時間が取れないし、後の列車だと遅すぎる。うーん、困ったぞ…と思いながら時刻表と眺めていて、ふと思いついた。13:20発で大沼駅まで行ったら、反対方向の列車が無いだろうか?調べてみたら大正解。見事、たった4分の待ち合わせで仁山経由函館行きの列車に乗り換えられることが分かった。

昼過ぎにホテルに戻って滑る支度を整え、函館駅でキップを買い13:20発の森行鈍行列車に乗り込む。昼メシは、駅への道すがら朝市で買ってきた“いかめし”だ。車内でいかめしを頬張っているうちに列車は七飯駅を発車し、仁山を通らない路線に入っていく。後で調べてみたら、この路線は仁山付近の急勾配を避けるために造られた新線だそうだ。ローカルムード満点の鈍行列車に揺られて40分、13:59に大沼着。ここで一旦下車して14:03発の函館行きに乗り換え。ひと駅たった7分で仁山駅に到着した。この列車はワンマン運転で、仁山のような無人駅で下車するときは、車両先頭のドアからしか降りられない。降りるときにキップを運転士に渡すのだ。『函館からのキップ』で『函館行』の列車を降りるというのも妙なものだがもちろん咎められることはなかった。ちょっと遠回りにはなるが、函館を発車して50分で仁山着だから、まあ許容範囲だろう。このルート、昼過ぎからちょいとひと滑り、って人には使えると思うのだがどうだろう?

この列車を仁山で降りたのは僕一人。周りは人っ子一人いない寂れ切った雰囲気で、スキー場まで数分のアクセス駅とは到底思えなかった。平日の昼過ぎだし、こんなモノだろうか。後は、駅前の道を北へちょこっと歩けばスキー場だ。ウェア類はホテルを出る時点で全部着込んでいるし、この日は板もブーツも全部レンタルで済ませることにしていたので、手ぶら同然。楽ちんそのものの行程だった。

すぐに見えてきたスキー場の斜面も案の定閑散としていた。リフト待ちなどあろう筈もなく滑り放題だ。スキーセットを借りてチケットを買い、いよいよゲレンデへ。因みにレンタル品には半日料金みたいな設定はなかった。まあ、一日料金でも2,000円だから安い方だろう。モノは…値段相応といったところか。メーカーは忘れたがちゃんとカービング板だったし、ワックスも効いていて滑る分には全く問題なかった。

このスキー場、施設は…建物もリフトもだいぶボロが目立って、正直“うら寂れたローカルスキー場”を絵に描いたような雰囲気だが、コースそのものは意外に面白い。非圧雪の急斜面が多いというのも僕としては嬉しい一面だ。

先ずは、正面のクワッドに乗ってトップを目指す。イキナリ面食らうのは、このクワッド下の急斜面である。マップを見てもコース扱いにはなっていないようなのだが、明らかに大勢の人間が滑った跡がある。それもいわゆる「リフト下の違反滑走」ではなく、どう見ても「滑っていいのよ」的な様相を呈している。そもそも林を伐採してある幅がどう見ても“コース”なのだ。だが、この斜面への入口はというとこれがまた、どう見てもイレギュラーな状況で、この辺りが一筋縄ではいかない所以だろう。この斜面に入るには、リフト降り場の柱と林の隙間、1メートルもないような狭い踏路を辿るしかないのだ。いずれにせよ、これだけトラックが残っているのだから滑っても文句は言われない筈で、一通り上部のコースを滑ったら後で来よう、と思いつつクワッドを降りた。

乗り継ぎの第2ペアリフトはすぐそばにある。このリフトの直下にある上級コースが今日の狙いだ。

ところが、リフトが動いていない!!ガーン!!!!

僕は、訪れたスキー場の上級コースは必ず全て滑走することに決めている。したがってリフトの運休には神経を使っていて、事前のリサーチはかなり入念に行っている。当然、ここも事前に電話を入れて、このリフトが動いていることは確認済みなのだがどういうことだ!?と、よく見るとリフト乗り場には係員がいるではないか。乗り場に近づいて行くと「どーぞ、どーぞ」と手招きし、おもむろにリフトを動かし始めたのだ。乗客がいないから、リフトを止めていたのであった。

僕が乗り込もうとすると「ここは初めてですか~?」と係員氏が訊いてきた。「ええ、そうですが」「じゃあ、上でコース説明させましょうか?」僕は100か所近いスキー場へ行っているが、こんなことを聞かれたのは初めてだ。何の事だかよく分からないが取り敢えず「じゃ、お願いします」とだけ答えてリフトに乗った。

第2ペアの下にはなかなか豪快な非圧雪急斜面が広がっている。広さは十分すぎるほどあるし、何しろリフトを止めて客を待っているくらいだから、滑っている人は誰もいない。この斜面を独り占めとは随分と贅沢なことで、本州のスキー場では、平日であってもそうそうできない体験だろう。雪面は、残念ながら無数のトラックが縦横に走ってモコモコに耕された状態だ。見た感じでは、ここ数日はまとまった降雪が無かったようだ。それよりも、またまた面食らったのは、このコースへの入口である。リフト降り場の辺りはちょっとした平地になっていて、そこからストンと切れ落ちるように急斜面が始まっているのだが、その斜面の始まりの部分に恐ろしいほどの雪庇ができているのだ。ヘタに踏み抜いたら数メートルは、落ちる。確か一か所だけ、雪庇をトラバースする形で進入路ができていたのでエントリーはできるが、吹雪やガスで視界が利かないときは…考えただけでも恐ろしい。

リフト降り場では、下の係員から連絡を受けたもう一人の係員氏が、コース説明用の手製のボードを持って待ち構えていた。要するに、ここから初級者の下山コースとなる“トラバーユコース”の入口が分かりにくいので、それを説明したかったらしい。確かに、初めての人間には分かり辛い場所にあるし、ヘタにリフト降り場周辺をウロウロされてあの雪庇から落ちでもされたら、それこそスキー場として一巻の終わりだろう。係員の熱のこもった説明によると、トラバーユコースは、今は廃止された第3ペアリフトの方向、即ち今見てきた急斜面とは逆方向に少し下った所から左に分岐しているとのこと。更に先を見ると、第3ペアとそれに沿うように造られた白樺コースの跡が今でも綺麗に残っていた。「あそこに目印が立ってるの、見えますよね?あそこを左に入ってくださいね」係員はもう、僕が初級コースを降りるものと決めてかかったようにしつこいくらいに念を押してからリフト小屋へ戻っていった。僕的には、初級コースの入口なんかより雪庇だらけの上級コース入口の方がよっぽど問題だったのだが、係員はそこには一言も触れなかったし、何を言われようがどの道滑るんだから、僕も敢えて何も聞かなかった。

一人になったので、ようやくゆっくりと景色を眺める。コースは概ね南東を向いていて、その方向には遠く函館湾と函館市街地が見えている。この日、スキー場上空には雲がかかって時折小雪がちらついていたのだが、市街地の方は晴れていて、陽光を浴びた海面がキラキラと輝き、ちょっと見とれてしまうほどの景色だった。反対側は高原状の緩やかな丘陵地帯が続いていて、さっき言った第3ペアと白樺コースの跡が見えている。このコースとリフトはメインの斜面からは完全に分断された場所にあり、乗り継ぎもコースの繋がりも悪そうで、廃止されても当然だなと思えた。

さて、滑るか。リフト下の急斜面が面ツルかそれに近い状態なら、折角の係員の説明も無視してパウダーランへGO!なのだが、モコモコ不整地の現状なら1本や2本遅らせたところで変わらない。足元は未だ具合の分からないレンタル板だし、準備運動と板慣らしを兼ねて、言われた通り初級コースを1本滑ることにした。

…以下、この日の各コースの状況である。

【トラバーユコース】
圧雪。夏場の車道を利用したありがちなコース。ショートカットしてパウダーランできるようなポイントも無く、つまらない。平日だからか、滑っている人もおらず、とにかく寂しい。

【第2ペア下の急斜面】
多分“パノラマコース”なのだろうが、公式のコースマップがいい加減で不正確で良く分からない。不整地。南東向き、標高低い、降雪量それほど多くない…という条件が重なれば、いくら北海道でもさすがにクラストしてしまう。モコモコの不整地がやや重めにクラストしているから足を取られて滑り辛い。フカフカパウダーに当たった日には絶叫モノの面白コースだろうが、そればかりは運次第だ。先に述べた通り、入口が雪庇だらけなのでエントリーには十分注意を。

【ダイナミックコース】
不整地。雪の状況は上に同じ。

【クワッド下の急斜面】
公式マップにはコースとしての記載なし。不整地。雪の状況は上に同じ。積雪量はやや少なくなる。入口がやたら狭いので注意。

【フリコ坂】
やや荒れた整地。カービングでぶっ飛ばすには気持ちのいいコースだが、雪面が結構荒れているので板がバタつく。

【ファミリーゲレンデ】
ベース前の広い緩斜面。整地。流して滑っていただけなのでよく覚えていないが、ここはかなり綺麗に圧雪が入っていたような気がする。ボードの初級者グループが何人か練習していた。

…16時半を回ってだいぶ薄暗くなった。ベース前ではナイターの照明が灯り始める。手元の4時間券はもちろんまだ有効で、時間までナイターを滑ることもできるがどうしようか。帰りの列車は17:07か18:55だ。ナイターでは上級コースは滑れなさそうだし、明日も丸一日滑る日だ、今日はもう十分だろう。17:07の函館行で帰ることにして、板を脱いだ。

このスキー場は、いろいろな意味で「惜しい」スキー場だと思う。折角豪快で楽しい急斜面があるのに、コースマップがいい加減だったり入口が無茶苦茶な状況だったりで、来場者が安心して楽しめる環境ができていない。手製のボードまで使ってコース説明をしてくれたリフト係員の姿勢にはもちろん敬意を表するが、それ以前に、マップやコース道標を整備すれば済む話だ。ついでに僕個人としては、これだけ不整地の急斜面があるのにコブが全然無いのも残念だった。一本くらいモーグルラインを作ってくれればそれはそれで客寄せになると思うのだが。

このスキー場の隅々に漂う“垢抜けないローカル感”は何も施設の老朽化だけに起因するものではなく、こういった、何となく前向き感のないオペレーション全体から出てくるのではないだろうか。

もし、また来ることがあるなら、今度はあの急斜面で腹一杯パウダーを喰いたいところだ。函館に泊まって前日前夜の降雪を見て、条件が良さそうなら朝一で来ればいい。何しろ函館からのアクセスは抜群にいいのだから。

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